オゾンとは

オゾンとは〜オゾンの事実【基礎知識】から【勘違いの訂正】まで

オゾンを最も簡単に説明すると、このようになります。

  • 酸素に似た気体である
  • 強力な殺菌作用がある
  • 毒性があり人体に直接浴びると危険だが、時間が経つと酸素になって無害になる

しかし、これだけで「オゾンの事実」を理解することはできません。
医療界や食料品業界では、強力な殺菌作用に注目して、オゾンで効率よく現場を消毒しているところがある一方で、上記の3点を知っていても毒性を過剰に警戒してオゾンの使用を避けているところもあります。
オゾンの知識を独自に解釈してしまうと、事実からどんどん離れていってしまいます。

そこで企業の経営者やビジネスパーソン、衛生意識が高い一般の方々には、この記事をお読みいただき、オゾンの基礎知識を獲得して、オゾンに関する勘違いを訂正することをおすすめします。
事実を知れば、オゾンが衛生管理に有効な価値ある物質であることを理解していただけると思います。

オゾンの簡単な化学的な話

オゾンの語源は、ギリシャ語の「臭う(におう)」という意味の「ozein」です。オゾンはその名のとおり、いわゆる「オゾン臭」と呼ばれる独特な臭いがします。
オゾンの物質としての特徴を紹介します。化学的な話になりますが、専門用語に解説を加えながらわかりやすく説明していきます。

オゾンは酸素の「親戚」

オゾンは、3つの酸素原子(O)からなる気体で、化学式は「O3」です。オゾンは、酸素原子2個の酸素(O2)の同素体です。同素体とは、同じ原子で構成されながら、原子の配列や結合の仕方が異なる物質どうし)のことです。
オゾンと酸素が同じ原子で構成されていることから、オゾンは酸素の「親戚」といえます。

酸素からオゾンをつくり、酸素に戻る

オゾンは自然界にも存在しますが、業務で使うオゾンは、機械を使って酸素から生産します。
酸素に電気を当てると、次のような変化が起きます。

3O2→2O3

3個の酸素から2個のオゾンができます。
つまり、こういうことです。

3個の酸素から2個のオゾンができます。

オゾンの構造は不安定であるため、放置しておくと酸素に戻ってしまいます。そのときの化学式は、先ほどの逆になります。

2O3→3O2

自然界のなかのオゾン

酸素に電気が当たるとオゾンができるので、雷の放電によって、自然界の空気中でもオゾンが発生します。
また、太陽光に含まれる紫外線の刺激でも、酸素がオゾンに変わります。

成層圏のオゾン層

出典:fanfun.jaxa.jp

自然界で最もオゾンが多く存在する場所は、成層圏にあるオゾン層で、濃度は10ppm(0.001%)になります。成層圏は上空10~50キロの空間です。1ppmは100万分の1という意味です。
紫外線が酸素に衝突してオゾンに変わるとき、紫外線の力も弱まります。そのため、オゾン層は、人にとって有害になる紫外線をカットしてくれます。

地上にもオゾンは漂っていて、その濃度は0.005ppmほどです。森林に入ると濃度が0.01ppmぐらいまで高まります。

さらに詳細な化学的な話

オゾンのその他の化学的な情報は次のとおりです。

  • 分子量:48
  • 常温での気体の色:薄い青色
  • 臭い:あり
  • 沸点:-111.9度
  • 融点:-192.5度
  • 密度:2.144㎏/㎥(0度の時)

「酸化」が「毒性と殺菌」という両極端な性質を生む

「酸化」が「毒性と殺菌」という両極端な性質を生む
オゾンには、毒性という人にとってやっかいな性質と、殺菌作用という人にとってありがたい性質が同居しています。
毒性は、50ppm以上の高濃度オゾンを人が大量に浴びると、1時間で命の危険に陥るレベルです。
オゾンの殺菌作用は、塩素よりはるかに強く(※)、ウイルスや細菌を確実に殺します。
この両極端のオゾンの性質を生み出しているのは、酸化作用です。
※オゾンはフッ素に次いで殺菌消毒作用が強く、塩素の約6倍。

電子が移動して錆びて劣化する

酸化とは、酸素に触れた物質が電子を失う現象のことです。時間の経過とともに鉄が錆びたり、食べ物の鮮度が落ちたりするのは、鉄や食べ物を構成する原子の電子が空気中の酸素に移動することで起きます。
生物の生存に欠かせない酸素には、物質を錆びさせたり劣化させたりする「悪者」の一面もあります。

酸化で細胞が破壊される

オゾンは酸素の「親戚」なので、物質を酸化させる力があります。
酸化の錆び効果や劣化効果は、オゾンの毒性と殺菌作用に深く関わっています。物質が酸化するとき、その物資の細胞膜や細胞壁が破壊されます。破壊された細胞は死滅します。

細菌やウイルスの細胞が破壊されれば、それは殺菌と呼ばれ「よい現象」と評価されます。
人の正常細胞が破壊されれば、それは毒と呼ばれ「悪い現象」と非難されます。

酸素よりオゾンのほうが酸化が強い

酸素にも酸化作用があり、物質を錆びさせたり劣化させたりしますが、破壊力ではオゾンのほうがはるかに上回っています。
酸素とオゾンは親戚どうしなのに、なぜ酸化のパワーに差が生じるのでしょうか。

酸素の酸化が、オゾンより弱いのは、酸素が安定しているからです。酸素は「O2」のまま変化しにくいので、酸素原子(1個のO)が生まれにくく、酸化がマイルドにしか起きません。

一方のオゾンは不安定な存在なので、すぐに「O3(オゾン)」から「O2(酸素)」になろうとします。このとき酸素原子(1個のO)が生まれ、これが次々酸化を引き起こしていきます。
酸素原子はときに、細菌を遺伝子レベルで破壊します。

結核などの病気を治す医療機関に、サナトリウム病院がありますが、その多くは自然豊かな場所に建っています。森のなかや林間部のほうが、都心より多くのオゾンが漂っていて、殺菌効果が得られるから、とされています。

食品添加物に指定されているくらい安全

食品添加物に指定されているくらい安全
オゾンに対する誤解とは、「殺菌作用はあるが、毒性がある」という理解です。
この「殺菌作用はあるが、毒性がある」という文章には間違いはなく、正しい内容なのですが、言葉のニュアンスを考えると誤解を生む可能性があります。

日本語の文章には、後ろの言葉で前の言葉の意味を弱める性質があります。「AだがB」という文章が伝えるのは、「Aという性質も含まれるが、重要なのはBである」というニュアンスです。
そのため「殺菌作用はあるが、毒性がある」と言ってしまうと「殺菌作用もあることはあるが、オゾンは本質的には毒である」という意味を醸し出してしまいます。
これでは、オゾンに詳しくない人は、医療界や食品業界の衛生管理で使う気持ちが失せてしまいます。

衛生管理でオゾンを検討している人は、オゾンのことを「毒性はあるが、殺菌作用がある」と理解してみてはいかがでしょうか。
この文章であれば、「オゾンは毒性があるので注意して使用しなければならないが、その注意を払ってでも、オゾンを衛生管理で使う価値は十分ある」というニュアンスが伝わると思います。

ここでオゾンの殺菌性を強調するのは、オゾンが食品衛生法上の食品添加物に指定されるほど、重要で安全な物質であることを「事実」としてお伝えしたいからです。

そもそも食品添加物とは

「無添加食品は素晴らしい」というイメージが広がったことで、その対極にある食品添加物は、悪者のように扱われることがあります。
しかし食品添加物は、現代の食生活においてなくてはならないものです。
もし食品添加物を完全に排除したら、食料品の価格は軒並み高騰し、一部の食べ物はお金持ちしか食べられなくなるでしょう。また、おいしい食べ物は激減するはずです。

食品添加物とは、保存料、甘味料、着色料、香料などの総称です。厚生労働省は、食品添加物の安全性を食品安全委員会に評価させ、健康を損なう恐れがない場合に限って、成分、規格、使用基準を定めて使用を許可しています。

食品添加物は「デメリットはあるものの、そのデメリットを極力減らすことができ、なおかつメリットが大きいもの」ということができます。

オゾンは「既存添加物」という食品添加物

オゾンは「既存添加物」という食品添加物
食品添加物には、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物の4種類があります。
オゾンは既存添加物に含まれます。

既存添加物は、長年使われた実績があり、厚生労働大臣が認めたものです。日本食品化学研究振興財団が公開している既存添加物名簿にはオゾンを含む357品目が収載されています。
オゾンは、安全に使える食品添加物としての実績がある物質です。

オゾンの食品添加物としての安全性を、政府として認定しているのは日本だけではありません。アメリカのFDA(食品医薬品局)も、オゾンを食品加工に使用することを「一般的に安全と認められる行為(Generally Recognized As Safe)」と認定しています。

残留性がないことのメリット

残留性がないことのメリット
オゾンの殺菌作用だけを活かし、衛生管理で安全に使うには、適切に扱う必要があります。
例えば、自動車が便利な道具になるのは、走らせたあとに確実に停止させられるときに限ります。機械ミスで暴走してしまったり、誤った運転をしたりすると、自動車は、時速100キロで走る1トンの凶器になります。
オゾンも自動車と同じように、殺菌作用だけを使うためには、毒性を確実に制御する必要があります。

ただ、オゾンを適切に扱うことは難しくありません。オゾンには残留性がないという長所があるからです。

数時間でほぼ消える

オゾンは、20~30分で濃度が半減し、数時間でほぼ消えます。オゾンは大気中に含まれているくらいなので、衛生管理の現場でも完全にオゾンを消し去る必要はなく、「ほぼ消えた」状態であれば問題ありません。

こうした性質を「オゾンには残留性がない」といいます。
残留性がないということは、後処理に気を使わなくてよいということです。
残留性のなさは、オゾンのような「便利な物質」にとって大きなメリットを生みます。

便利なのに取り扱いが楽

多くの公害は、便利な物質の残留性の高さによって引き起こされてきました。
例えば、電池、計測機器、薬品、照明器具、塗料などに使われる水銀は、便利な物質の代表格ですが、残留性が高いために使用後に特殊な後処理をしないと人体に甚大な悪影響を与えます。
水俣病は、水銀の残留性によって引き起こされました。

またアスベスト(石綿)はかつて、3,000種類もの工業製品になり、人々の生活になくてはならない存在でした。それはアスベストが、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性に優れ、そのうえ安価だったからです。
しかしアスベストは、じん肺や悪性中皮腫、そして肺がんを引き起こす危険があることがわかりました。アスベストは今、使うことだけでなく、製造も輸入も、譲渡も提供も禁止されています。

殺菌性を発揮したあと、放置しておけば自然に酸素に変わっていくオゾンは、便利な物質のなかでは珍しい「取り扱いが楽な便利物質」ということができます。
日本産業衛生学会は、作業場におけるオゾン濃度の許容範囲を0.1ppm(※)としています。つまり、空気中のオゾン濃度をそこまで薄めれば、人にとって安全である、ということです。
※これは有人環境下の基準であり、無人環境で行う殺菌消毒作業は1.0ppm超の濃度で行われるのが一般的です。

多くの分野で活用されている

多くの分野で活用されている
オゾンは多くの分野で活用されています。特に利用が活発なのが、宿泊施設業、自動車関連業、医療、福祉、食品、農業、漁業、畜産、上水処理などの分野です。
オゾンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、O-157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カビなどを100%殺します。
このような細菌やウイルスは、体内に入ると重大な健康被害をもたらします。
それで、体調が優れない人が多くいる病院や介護施設、食べ物を扱う食品工場や農場、市場といった施設でオゾンが使われています。
病院や介護施設の場合、便臭が課題になることがあるので、オゾンの消臭効果も重宝がられています。

耐性菌をつくらない

耐性菌をつくらない

出典:国立国際医療研究センター

オゾンは耐性菌をつくりません。
耐性菌とは、殺菌剤や除菌剤が効かない細菌のことです。

例えば、抗生物質は、さまざまな有害菌を殺すことから現代医学で最も重要な薬の1つと考えられています。
しかし、特定の患者に抗生物質を使い続けると、その患者の体内に耐性菌ができてしまい、次第に抗生物質が効かなくなります。

耐性菌は、細菌の「知恵」といえます。
細菌は、殺菌剤や除菌剤によって消滅の危機にさらされると、知恵を使って生き残ろうとします。その答えが耐性菌です。
耐性菌はさらに、感染という知恵も持っています。耐性菌が発生すると薬剤が効かなくなるので、耐性菌を持った人は死んでしまいます。人が死ぬと、耐性菌も存続できません。そこで、人から人に感染することで、耐性菌は生き延びようとします。

オゾンは細菌やウイルスを構造的に破壊することから、耐性菌をつくる「スキ」を与えません。事実上、オゾンの殺菌効果がある細菌やウイルスに対して、オゾンが効かなくなることはありません。

オゾンは「新型コロナウイルス」に効くのか

オゾンは「新型コロナウイルス」に効くのか

出典:NIID 国立感染症研究所

オゾンはウイルスや細菌への対策に有効であることから、2020年に世界を震撼させた「新型コロナウイルス」にもアルコールや次亜塩素酸ナトリウム同様、効果があるとされています。

新型コロナウイルスは、コロナウイルスの新型です。そして「新型」がつかない普通のコロナウイルスは、普通の風邪の原因になっています。
オゾンは、従来のコロナウイルスやインフルエンザの予防に効果があることが実証されています。

特にコロナ禍の今、こうしたオゾンの特性を冷静にみきわめ、多くの病院、観光バス会社、ホテルなどは、「新型コロナウイルスに効果があるだろう」と期待してオゾン発生器やオゾン水生成器を購入しています。
また、こうした需要の高まりを受け、総合重工業メーカーのIHIは2020年3月に、オゾン殺菌装置(オゾン発生器)を増産すること決めました。

まとめ~基礎知識を増やして事実を見極める

「オゾンの殺菌効果は魅力だが、毒性のコントロールが大変そうだ」
このように思うと、オゾンを自分の仕事現場で使おうとは思わないでしょう。

「オゾンの毒性をコントロールすれば、あの殺菌作用を活用できる」
このように考えると、オゾンを自分の職場に導入したくなるでしょう。

毒性と殺菌作用は、オゾンの二大特性ですが、その知識だけでは「オゾンの事実」をとらえることができません。
オゾンが酸素の「親戚」であったり、しばらくすると酸素に戻ったり、食品添加物として認定されていたり、残留性も耐性菌もなかったりすることを知れば、オゾンの有用性の高さが事実であるとご理解いただけたはずです。

コロナ禍によって細菌やウイルスへの危機感が高まった今こそ、オゾンの知識を増やして事実を見極めたいものもです。

今回は気体のオゾンをメインに説明しましたが、液体のオゾン水もよろしければご覧下さい。