オゾン水とは

オゾン水とは

殺菌や漂白に使われるオゾンは「O3」と表記する気体です。そのままでも殺菌効果があるのですが、気体はとらえどころがないので、扱いにくいという欠点があります。
そこで「オゾン水」が開発されました。オゾンを水に溶かせば、オゾンの殺菌効果と、液体の取り扱いやすさの両方のメリットを活かすことができます。

しかもオゾン水は、気体オゾンより安全です。
高濃度の気体オゾンは「毒性」を持ちますが、オゾン水は毒性を除去できます。目の手術をするときに、オゾン水で患者の目を洗うくらい、安全です。パナソニックが、トイレにオゾン水発生装置をつけたくらい、安全です。

この記事では、オゾン水の活用法やオゾン水のつくり方などを紹介します。

オゾン水の活用法〜オゾン水はすでに日常生活に浸透している

オゾン水の活用法〜オゾン水はすでに日常生活に浸透している
オゾン水の「理屈的」「科学的」な話は後段に譲り、まずはその活用法を紹介します。これを知れば、オゾン水がすでに日常生活のなかに浸透していることに驚かれると思います。

白内障手術の前にオゾン水で「患者の目」を洗う

白内障手術の前にオゾン水で「患者の目」を洗う
オゾン水は、白内障の手術を受ける患者の目の洗浄に使われることがあります。

白内障は、目のレンズの役割を果たしている水晶体という部位が、白く濁って視力が低下する病気です。主な原因は加齢で、80歳以上の人はほぼ100%発症するとされています。
ただ恐い病気ではなく、手術によってほぼ改善します。手術は、支障が出ている水晶体を除去して、人工の眼内レンズを入れるだけで終わります。

白内障の手術では、器具が人の目に直接接触するので、目を消毒する必要があります。
目の消毒には、ヨード系の消毒液が広く使われています。イソジンも、ヨード系消毒液です。しかし、ヨード系の消毒液は刺激が強く、手術後に麻酔が切れると「ジンジン痛む」と訴える患者が少なくありませんでした。また、角膜に、ただれ(びらん)が起きることもありました。

そこで、ヨード系の消毒液の代わりに、オゾン水で患者の目を消毒、洗浄する眼科医が増えてきました(*1、2)。
眼科医のなかには、ヨード系消毒液からオゾン水に切り替えたことで、次のようなメリットが得られたという人もいます(*1、2)。

  • オゾン水のほうが、ヨード系消毒液より殺菌能力が高い
  • 角膜の障害頻度が著しく低い
  • 角膜のびらんが減った
  • 患者の手術後の痛みの訴えが激減した
  • ヨード系消毒液を使っていたときに発生していた「手術後の視力の回復の遅れ」が、オゾン水に切り替えたことでなくなった

*1:http://tsukubahashimotoganka.jp/CatOpe.html
*2:https://morii-ganka.jp/column/?p=70

パナソニックはトイレに「オゾン水製造装置」を取りつけた

パナソニックはトイレに「オゾン水製造装置」を取りつけた

出典:sumai.panasonic.jp

パナソニックは2018年に、オゾン水をつくる装置を取りつけたトイレ「アラウーノL150シリーズ」を販売しました(*3、4)。
オゾン水製造装置は、水道水に高電圧をかけてオゾン水をつくります。そして、それをそのまま便器内に散布します。アラウーノの特長は、散布する直前にオゾン水をつくるので、常に新鮮なオゾン水で便器を殺菌できる点です。

オゾン水の原料は、水道水と電気だけです。つまり、薬剤を使わないので、オゾン水をそのまま下水道に流しても問題ありません。しかもオゾン水は、時間が経つと自然に、単なる水に戻ります。

パナソニックは大阪府立大学との共同研究で、アラウーノのオゾン水が、黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ、コレラ菌、カンピロバクターなどの細菌を99%以上殺菌できることを確かめています。

パナソニックの開発責任者は、オゾン水製造装置をトイレに内蔵できるほど小さくできたことに意義があると説明しています。
小型化したことで、浴室や台所などの、住宅のなかのすべての水回り設備にオゾン水製造装置を設置できるようになるので、将来は、家を丸ごと殺菌、防カビ、脱臭できるようになるかもしれません。

*3:https://sumai.panasonic.jp/toilet/alauno/feature/detail.php?id=ozon-water
*4:https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/1136459.html

新型コロナ対策に期待が高まる

新型コロナ対策に期待が高まる
オゾン水に、新型コロナウイルスを叩く(不活性化する)効果があることはまだ確認されていません。しかしオゾン水がさまざまな「迷惑」かつ「有害」なウイルスを不活性化させていることは実証済です。
日本医療・環境オゾン学会によると、オゾン水は、ノロウイルスとインフルエンザウイルスを不活性化させます(*5)。
このような実績から、オゾン水の、新型コロナウイルスへの効果も期待されています。

新型コロナウイルスは、エンベロープウイルスというタイプに分類されます。「エンベロープ」は特殊な膜のことで、この膜があると、ウイルスが宿主の細胞に結合しやすくなります。オゾン水は、エンベロープを破壊することが証明されています(*5)。
オゾン水が新型コロナウイルスのエンベロープも破壊することがわかれば、コロナ対策が一気に進むかもしれないので、期待が膨らみます。
ただ、オゾンやオゾン水が従来のコロナウイルス(新型ではない)を不活化することはわかっているため、新型コロナウイルスについても当然不活化するだろうというのが、多くの専門家たちの考えです。

ウイルス ウイルス名 オゾンの有効性
SARS-CoV SARSコロナウイルス
SARS-CoV
確認済み
MERS-CoV MERSコロナウイルス
MERS-CoV
確認済み
新型コロナウイルス 新型コロナウイルス
SARS-CoV-2
従来のコロナウイルスは不活化されるため、新型についても不活化するであろう。

*5:https://bit.ly/2KX3mlk

「院内感染防止の手指洗浄剤として最適」と評価されている

「院内感染防止の手指洗浄剤として最適」と評価されている
オゾン水は、病院内での殺菌でも効果をあげています。
静岡県立大学などの研究によると、オゾン水は、病院が院内感染の原因菌として厳重にマークしているMRSAやVREなどの多剤耐性菌の殺菌に効果があります(*6)。
MRSAとVREをオゾン水にさらしたところ、菌の細胞の表面が壊れ、細胞の内容物が漏れ出て死滅しました。
同大の研究者は、オゾン水は「院内感染防止の手指洗浄剤として最適」と評価しています。

*6:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf

その他のオゾン水の利用例

その他のオゾン水の利用例
農業分野や産業界は、いち早くオゾン水を使ってきました。
オゾン水は、野菜や魚などの食材の除菌に使われたり、太陽電池の部品の洗浄に使われたりしています。
その他、包丁やまな板などの調理器具の除菌、生ゴミ置き場の洗浄・脱臭、床のぬめり取り、排水溝の悪臭対策として、オゾン水が使われています。

なぜ「気体オゾン」より「オゾン水」のほうが優れているのか

なぜ「気体オゾン」より「オゾン水」のほうが優れているのか
オゾンは、元の状態である気体でも効果を発揮しますが、オゾン水のほうが、殺菌をするときの業務に適しています。
それは、1)オゾン水にすることで特殊な力が生まれるから、2)水は気体より断然扱いやすいから、です。

「OHラジカル」が特殊な力を生む

「OHラジカル」が特殊な力を生む

出典:https://kaden.watch.impress.co.jp/

気体オゾンになく、オゾン水にあるのは「OHラジカル」です(*7)。これが「特殊な力」の源です。
気体であるオゾン(O3)は不安定な状態なので、酸素原子(O)を1個放出して、安定的な酸素(O2)になろうとします。
オゾンが酸素になろうとする現象が、水(H2O)のなかで起きると、放出された1個の酸素原子(O)は、水分子(H2O)から水素原子(H)を1個奪います。酸素原子1個と水素原子1個が結合したものが「OHラジカル」です。

O3+H2O→O2+OH+OH

OHラジカルは「電子が不足している」状態にあるので、近くの物質から「電子を奪おう」とします。電子が奪われた物質は、分解されます。
「物質の分解」能力こそ、OHラジカルの特殊な力であり、強力な殺菌力になります。

*7:https://www.gokohshoji.co.jp/data_files/view/234/mode:inline

「気体オゾン」より扱いやすいから「オゾン水」のほうが優れている

液体という性質も、オゾン水が気体オゾンより優れている理由の1つです。
気体はどこに飛んでいくかわかりません。気体オゾンは透明(※)なので、どこまでオゾンは充満しているのか目で追うことはできません。仮に、見えたとしても飛散をコントロールすることは簡単ではありません。
※厳密には淡青色ですが、肉眼では確認できません。
また、高濃度の気体オゾンを人が一定時間吸い続けると、著しく健康を害します。だからといって、気体オゾンを使うときに換気を強くしてしまうと、殺菌効果が低下してしまいます。

その点、オゾンを水に溶かしておけば、水が飛び散らない限り、オゾンも飛び散りません。また、オゾン水であれば、殺菌したい場所に注ぐことができます。オゾン水が注がれない場所には影響が及びません。
水は気体より、格段に操作性がよいのです。

オゾン水であれば、水の量を変えるだけで濃度を自由かつ確実に変えることができます。人体に害を及ぼさない程度にまで薄めながら、細菌やウイルスを確実に殺す濃度を保つことができます。

オゾン水のつくり方

オゾン水のつくり方
オゾン水をつくる方法は「バブリング式」と「低電圧電解式(※)」との2通りあります。
※直接電解式や単に電解式などとも呼ばれます。

バブリング式によるオゾン水のつくり方

バブリング式は、気体のオゾンを水に吹き込ませて、オゾン水をつくります。
生成時の泡は「ボコボコッ」という感じで大きな気泡ができます。
気体のオゾンを水道水に溶かすわけですが、完全に溶け切らないことがあります。その場合、気体のオゾンが空気中に放出してしまいます。また、気体オゾンを水に溶けこませることは簡単ではなく、高濃度のオゾン水をつくることはできません。

電解式によるオゾン水のつくり方

低電圧電解式は、水に電圧をかけてオゾンを発生させる方法ですが、単に電圧をかけただけでは、酸素と水素しか発生しません。
オゾンを発生させるには、電圧をかけるときに使う電極に「二酸化鉛」という物質を使う必要があります。
生成時の泡は、バブリング式に比べ、非常に細かく「シュワシュワ」という感じで微細な泡が確認できます。

低電圧電解式のほうが、先に紹介したバブリング式より優れていると考えられています。低電圧電解式は高濃度のオゾン水をつくることができますが、バブリング式では濃度に限界があります。
また低電圧電解式の場合、製造過程で空気中に気体のオゾンが放出される心配がありません。

オゾン水は鮮度が命

オゾン水は鮮度が命
オゾン水の弱点は、つくり置きができないことです。
オゾン水は放置しておくと、時間経過とともに水と酸素に分解され「オゾン濃度は21分毎に半減する」とされています。
ですから、オゾン水は「生成したら、なるべく早く使う」が鉄則です。
早く使えば使うほどオゾン濃度が高く、菌やウイルスの殺菌消毒・不活化の効果は高くなります。
つまり、「オゾン水は鮮度が命」なのです。
ただこの弱点は、「オゾン水は残留物を残さない」という、よい性質にもなっています。

まとめ~質の高い殺菌・不活化を求めて

殺菌という作業には「殺せばよい」で終わらない難しさがあります。よいものや有益なものを傷つけないようにしながら、悪いものや害のあるものだけを殺さないとならないからです。
オゾン水は、選択的に悪い菌やウイルスを殺したり、感染できない状態にすることに適しています。
これだけ優れた液体なので、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム同様、今世界中で新型コロナウイルスを効果的に不活化するためのさまざまな研究が行われています。

今回は液体のオゾンをメインに説明しましたが、気体のオゾンもよろしければご覧下さい。