オゾンをフェアに評価すると「危険」だが「超安全」となる

オゾンをフェアに評価すると「危険」だが「超安全」となる

新型コロナウイルス問題で、オゾンに注目が集まっています。
それはオゾンが、殺菌剤、脱臭剤、漂白剤として使われているからですが、その一方で「オゾンは危険だ」と指摘する人がいます。
高濃度のオゾンを大量に吸い込むと命の危険があるので、オゾンは確かに危険です。

ただ、オゾンほど安全な殺菌剤はありません。
なぜなら、オゾン(O3)は放置しておくと自然に酸素(O2)に戻るからです。オゾンは残留しないので、殺菌作業を終えたあとに、洗い流す必要はありません。これは殺菌剤には珍しい長所です。

オゾンを危険視しすぎて、これほど「優秀な殺菌剤」を遠ざけることはもったいないことです。だからといって、取り扱い方法を確認せずオゾンを使うことは危険です。
この記事では、オゾンを「フェアに」評価して、間違って理解している人の誤解を解き、賢く使う方法を紹介します。

また、伝統的な殺菌剤である、アルコール、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム液にも「便利さと危険性」が同居しているので、こちらもフェアに評価してみます。

オゾンはなぜ危険なのか

オゾンはなぜ危険なのか
先にオゾンの危険性を解説します。
オゾンの危険性は、殺菌作用の強さの裏返しです。
細菌やウイルスを確実に消滅できるので、使用法を間違えると、人体にも悪影響を与えてしまいます。

毒性はあるが毒ではない

人体に悪影響を与えるという意味で、オゾンには「毒性がある」といえます。しかし、オゾンは「毒」ではありません。
オゾンは自然界にも存在し、地球の上空にはオゾン層がありますし、森林に入るとオゾン濃度が高くなることがわかっています。

例えば、ハブの毒やフグの毒は、人にメリットをもたらさず、害しかもたらさないので「毒」です。
しかし、抗がん剤や風邪薬などは、副作用の可能性を孕みますが、人に大きなメリットをもたらすので「毒性がある」と表現します。

毒性学の父「パラケルスス」

毒性学の父「パラケルスス」

「全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだ」 (ドイツ語: Alle Dinge sind Gift und nichts ist ohne Gift; allein die Dosis macht es, dass ein Ding kein Gift ist.)

-パラケルスス

医学に「毒性学」という領域がありますが、これは人の健康や環境を守りながら、物質の有効利用を考える学問です(*1)。オゾンも、人の健康を守りながら使えば、確実に有効利用できます。

*1:http://www.nihs.go.jp/tox/Toxicology_0A25.pdf

オゾンの酸化力が「毒性=殺菌性」を生む

残留性がないことのメリット
オゾンの殺菌性(=毒性)は、オゾンが持つ酸化力という性質が生んでいます。

酸化とは、物質が電子を失う現象で、日常生活で普通に起きています。食べ物が腐る、鉄が錆びる、体が老化する、これらは酸化によるものです。酸化には、消滅や死を早める作用があります。
そのため、酸化は「よくないこと」と理解されています。しかし、細菌やウイルスを消滅させることは、人にとって「よいこと」なので、酸化は人類の武器にもなります。

酸化を早める成分のことを「酸化剤」といいます。酸素(O2)も酸化剤の1つです。酸素は、動物が生きるために欠かせない成分でありながら、動物の死を早める作用も持っていることになります。

酸素の「親戚」であるオゾン(O3)も酸化剤の1つです。オゾンの酸化力は、酸素とは比べ物にならないくらい強力です。
オゾンの酸化力は、フッ素(F2)に次いで2番目に強いとされています。

物質は、オゾンなどの酸化剤にさらされると、酸化されて電子が奪われます。電子が奪われた細胞は壊れます。電子が奪われた細胞はさらに、近隣の細胞から電子を奪うので、崩壊の連鎖が起きます(*2)。
つまり酸化剤にさらされた物質は、酸化剤による攻撃と、自身の崩壊によって劣化したり死滅したりします。

先ほど、オゾンは酸素の「親戚」と解説しましたが、それは酸素に電気や紫外線などで刺激を与えると、オゾンに変わるからです。しかもオゾンは短時間で酸素に戻っていきます。さらに、オゾンも酸素も、酸素原子(O)だけでできています。
「親戚」のことを化学の専門用語では「同素体」といいます。

オゾンをより詳しく知りたい方は「オゾンとは」をご覧下さい。

*2:http://www.tofu-as.com/health/02food/08.html

オゾンの「危険レベル=安全レベル」とは

森林に存在する程度のオゾン濃度であればまったく安全で、むしろ健康によいくらいです。しかし工業的に製造する高濃度オゾンになると危険です。
この2つの境界線は明確に存在し、それは濃度0.1ppmです。
ppmは百万分の1という意味で、濃度0.1ppmは、1立方メートルの空間のなかに、0.2mgのオゾンが存在する状態です。

オゾン濃度0.1ppmは、日本産業衛生学会が定めた作業環境基準の許容濃度で、これより濃いと危険で、これより薄いと安全(健康の害なし)となります(*3)。

また日本オゾン協会は、オゾン濃度について次のような説明をしています(*4)

オゾン濃度 症状等
0.01~0.02 ppm オゾンの臭気を感じる
0.1 ppm~ 鼻、のどへの刺激を感じる
0.2~0.5 ppm 視力の低下
0.4~0.5 ppm 上部気道に刺激を感じる
0.6~0.8 ppm 胸痛感知、咳
1~2 ppm 疲労感・頭痛・頭重の感知、呼吸機能の変化
5~10 ppm 呼吸困難、脈拍増加
50 ppm~ 生命の危険が起こる(死に至ることもある)

日本産業衛生学会の基準である0.1ppmでも、鼻などへの刺激といった違和感を持つことがわかります。
そして基準値の2倍である0.2ppmですでに、視力の低下という健康被害が始まります。そして50ppm(0.005%)で死に至ることにあります。とはいえ、50ppmなどは特殊な設備がある研究施設などでないかぎり、非日常的な数値なので、あまり気にされなくて大丈夫です。

また、このときの0.1ppmというのは有人環境下の基準であり、業務用オゾン発生器などを使用して殺菌消毒作業を行う際などは1〜2ppm程度、あるいは必要に応じてそれ以上の濃度で作業をするのが普通のため、当然、無人環境で作業を行います。

*3:https://www.sanei.or.jp/images/contents/309/kyoyou.pdf
*4:https://www.karumoa.co.jp/qa/service/qa35/

オゾンの物質への影響は無視できるレベル

オゾンの酸化作用は、鉄やゴムなどの素材も劣化させます。ただし、素材の劣化が問題になるのは「200ppm」という超高濃度のレベルにおいてです(*5)。これは、産業や研究でオゾンを使うときのレベルであり、非日常的な数値です。

病院や介護施設はもちろん、自宅や職場を殺菌するときに、ここまで高い濃度のオゾンを使うことはありません。室内を密閉して無人で行うオゾン殺菌でも、オゾン濃度は1〜2ppm程度にしか上げません(*6)。

*5:https://www.ihi.co.jp/iat/shibaura/ozone/product/hz-100.html
*6:https://www.orc.co.jp/lineup/welfare/03.html

オゾンはなぜ「超安全」なのか

オゾンはなぜ「超安全」なのか
続いて、オゾンの安全性について紹介します。
野菜や鮮魚などの食材をオゾンで殺菌している業者などは、オゾンが持つ「残留しない」性質をとても重宝しています。
ほとんどの殺菌剤、消毒液、消臭剤は、使用後に毒性の成分が残留してしまいます。殺菌による残留で深刻な事態をもたらすのが、農薬です。2005年ごろ、中国から日本に輸入されたキャベツやホウレンソウに許容濃度を超える農薬が検出され大きな問題になりました(*7)。

普通の殺菌剤は、使ったら取り除かなければならず、それは手間とコストがかかるだけでなく、「洗い残し」というリスクを抱えます。
しかしオゾンは残留しません。オゾンは、自然に酸素に戻ることから「超安全な殺菌剤」という評価を獲得しています。

*7:https://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2006chiiki-PDF/ando2.pdf

このように使えば安全、手洗いも可能

オゾン発生器を使用して殺菌消毒作業を行う際は次のことに注意しましょう。。

安全な使用方法その①
室内殺菌をしたら、終了から30分~1時間は入室しない
室内全体を殺菌するオゾン発生器を使う場合、室内から人が出て、稼働させます。オゾン発生器のタイマーが切れて殺菌が終了しても、30分~1時間は入室しないで下さい。
また、入室したら、ドアや窓を開けて換気して下さい。
「オゾンの臭い」が消えたら、換気を終えても構いません。
オゾン発生器のなかには、低濃度のオゾンしか発しない、人が居る部屋で使える製品もあります。
<参考>
Q&A そもそも、オゾン発生器ってどうやって使うんですか?

安全な使用方法その②
吹き出し口からオゾンを吸わない
強力タイプはもちろんのこと、低濃度タイプのオゾン発生器でも、オゾンの吹き出し口から直接吸い込まないようにして下さい。

安全な使用方法その③
家庭用と業務用を使いわける
オゾン発生器には、家庭用の低濃度タイプと、業務用の高濃度タイプがあります。業務用を家庭で使うのは危険です。また、家庭用を業務で使った場合、十分に殺菌できないかもしれません。
ほとんどのオゾン発生器は、メーカーが使用方法を定めているので、それにしたがって下さい。
オゾン殺菌は、使用者が「自分流」で機器を使わなければ、安全に実施できます。

安全な使用方法その④
オゾン水なら手洗いも可能
手洗い専用のオゾン水をつくる機械も市販されています(*8)。オゾン水とは、オゾンが水に溶けた液体で、低濃度であれば皮膚に触れてもまったく問題ありません。

*8:https://www.nikkamicron-kansenboushi.com/handlex/

オゾンに発がん性はない

オゾンには発がん性がないとされています。
殺菌剤でも、次亜塩素酸ナトリウム液には、発がん性が報告されています。

食品添加物に指定されているくらい安全

食品添加物に指定されているくらい安全
オゾン水は食材の殺菌に使われています。それは、オゾンが、食品衛生法の食品添加物に指定されているからです(*9)。
食品添加物とは、食品の製造、保存などの目的で食品に添加して使うものです(食品衛生法第4条)。
食品添加物には4種類があるのですが、オゾンはそのなかの「既存添加物」に指定されています。既存添加物は、長年使われてきて実績があるものを、厚生労働大臣が認めたものです。
アメリカでも、食品医薬品局(FDA)が、食品加工でオゾンを使うことを認可しています。

*9:http://www.k-ozone.org/wp-content/uploads/2012/09/No302.pdf

その他の殺菌剤も「便利さと危険性」が同居している

その他の殺菌剤も「便利さと危険性」が同居している
オゾンをフェアに評価するには、その他の殺菌剤についても知っておかなければならないでしょう。
新型コロナウイルス問題ではオゾン以外にも、アルコール、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム液も殺菌剤として注目されています。
これらの「便利さと危険」を紹介します。

アルコールの便利さと危険性

アルコールの便利さと危険性

店内入り口に置かれるアルコール消毒液

厚生労働省は、新型コロナウイルス対策の1つとして、アルコールを使った手洗いを推奨しています(*10)。
また、コロナ禍以前から、アルコールは長らく医療機関で消毒液として使われてきました。アルコールは実績のある殺菌剤です。

アルコールは製造が簡単なだけでなく、誰でも簡単に手に入れることができます。お酒として飲めるくらいなので、一般の人も「アルコールなら安全に扱える」と思っています。そのため新型コロナ禍では、アルコール系の殺菌剤を買い占める騒動がありました。

また、アルコールは殺菌剤としての能力が高く、次のような特性があります(*11)。

  • 殺菌スピードが速い
  • 殺菌できる細菌やウイルスの種類が多い
  • 毒性が低い

ただアルコールは燃料に使われるほどなので、燃えやすいという欠点があります。さらに、手荒れのリスクもあります。
また、ノロウイルスやロタウイルスなど、オゾンでは殺せても、アルコールでは殺すことができないウイルスもあります。

*10:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
*11:https://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/08/08_05.pdf

次亜塩素酸水の便利さと危険性

次亜塩素酸水の便利さと危険性

大府市や東浦町などで行われた次亜塩素酸水の無料配布

次亜塩素酸水も高い殺菌性があることで知られていますが、新型コロナウイルスに対しては、政府は「現時点においては、手指の消毒の有効性は確認されていない」との見解を示しています(*12)。
ただこれは、確認していないだけで、「有効性がない」ことが証明されたわけではありません。

次亜塩素酸水は、次の章で紹介する次亜塩素酸ナトリウム液よりも、1)毒性が強い塩素濃度が低いのに、2)殺菌力が強い次亜塩素酸(HOCl)の濃度が高い、という性質があります(*13)。
殺菌剤としての「よい性質」が2つもあるわけです。

厚生労働省によると、次亜塩素酸水でカットレタス、カットキャベツ、カイワレ大根、鳥ささみ肉を次亜塩素酸水で処理したところ、いずれも細菌数を減らすことができました。
さらに、次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムの1/3の塩素濃度で同等の効果が得られることもわかっています(*14)。

多くの地方自治体も、次亜塩素酸水を高く評価しています。森町(静岡県)、海老名市(神奈川県)、大府市(愛知県)などが、新型コロナ対策として住民に次亜塩素酸水を無償で配布しています(*15)。

次亜塩素酸水なら、塩素濃度が低いので、手洗いに使うことができます。次亜塩素酸ナトリウム液は毒性が強すぎて手洗いに使うことはできません。

次亜塩素酸水を殺菌に使うときは、次のことに注意して下さい(*16)。

  • 次亜塩素酸水による手洗いは、石鹸による手洗いの補助的なものにする(手洗いは原則、石鹸で行う)
  • 薄めて使う
  • 3カ月で効果が低下する
  • 日光に当てると劣化する
  • 皮膚炎や湿疹が出ることがある
  • 目に入ったら、水道水で15分以上流し、眼科を受診する
  • 酸性の製品と混ぜてはならない。混ぜると有毒ガスが発生する

*12:http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b201147.pdf/$File/b201147.pdf
*13:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf
*14:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
*15:
https://www.town.morimachi.shizuoka.jp/gyosei/kenko_fukushi/kenkoukanri_kansennshou/coronavirus/3128.html
https://www.city.ebina.kanagawa.jp/guide/kenko/1010591/1010692/1010699/1010735.html
https://www.city.obu.aichi.jp/kenko/news_kenko/1013886.html
*16:https://www.city.shimada.shizuoka.jp/fs/2/6/4/4/9/7/_/tukaikata.pdf

次亜塩素酸ナトリウム液の便利さと危険性

次亜塩素酸ナトリウム液の便利さと危険性
次亜塩素酸ナトリウム液も、アルコール同様、厚生労働省が推奨している、新型コロナウイルス対策の殺菌剤です(*10)。
名前が似ていますが、次亜塩素酸ナトリウム液は、次亜塩素酸水とは異なります。

スーパーなどで簡単に買うことができる、漂白剤のハイターやブリーチは、次亜塩素酸ナトリウム液です。入手が簡単で、使い慣れているところが、次亜塩素酸ナトリウム液の便利さといえるでしょう。

ただ、家や事務所のなかの殺菌をするときは、ハイターやブリーチの次亜塩素酸ナトリウムの濃度を0.05%まで薄める必要があります。
漂白剤(原液)の濃度が6%であれば、漂白剤(原液)25mlに対し、水3lで薄めると0.05%になります。

次亜塩素酸ナトリウム液に含まれている塩素は強い毒性があるので、取り扱いには注意して下さい。
ハイターを製造している花王は、次のように呼び掛けています(*17)。

  • 原液で使わない(必ず薄めて使う)
  • 殺菌するときはゴム手袋をする
  • 衣類に付着すると脱色してしまう
  • 酸性の製品に混ぜると、有毒な塩素ガスが発生して危険
  • 目に入ったら失明の恐れがある。ただちに流水で目を15分以上洗い流し、そのあと必ず眼科を受診する
  • 皮膚についたら、すぐに水で洗い流す。異常があれば皮膚科を受診する

そして、体調が悪いときは、ハイターを使わないようにして下さい。

次亜塩素酸ナトリウムに含まれている塩素は、発がん性のあるトリハロメタンをつくることが知られています。
ただ家庭内の殺菌で、薄めたハイターを使っているぐらいでは、トリハロメタンを気にする必要はありません。水道水のなかにも、基準値以下のトリハロメタンが含まれています。
しかし、次亜塩素酸ナトリウムの毒性や危険性として、トリハロメタンの存在は知っておいて下さい。
塩素濃度がかなり低い次亜塩素酸水では、トリハロメタンはほとんど問題になりません。

*17:https://www.kao.com/jp/haiter/hit_kitchen_00.html

まとめ~混乱しているからこそフェアな評価を

まとめ~混乱しているからこそフェアな評価を
新型コロナ問題の情報が錯綜しています。フェイクニュース(嘘記事)だけでなく、「よかれ」と思って出した情報が混乱を招く事態も起きています。
しかし、ほとんどの人にとって世界初の出来事であり、相手が未知の敵なので、「情報問題」は仕方がない部分もあります。

ただそうであっても、殺菌に関する情報は、自分や家族などの健康と命に関わることなので、どうしても正しい情報を得る必要があります。
そして、正しい情報を集めたら、自分自身で「フェアな評価」をしなければなりません。

オゾンについては、殺菌の専門家たちが高く評価しているにも関わらず、「危険」という評判が先行しすぎているようです。
フェアな評価をすれば、オゾンが新型コロナ対策に貢献できることは間違いないはずです。